エロスとまなざし
性を描く者たちへの共感と違和感
山田陽一 著
四六判上製 224ページ
定価:1700円+税

目次
本書の成り立ち 〜 まえがきにかえて〜
I
話題作の性表現を斬る!
内舘牧子『義務と演技』への違和感
村上龍『ラブ&ポップ』への拭えぬ疑問
佐藤亜有子『ボディ・レンタル』の時代性
映画『奇跡の海』に見る性愛と信仰
団鬼六が示した戯作者の心意気
二大アニメの評価をめぐって
桐野夏生の話題作『OUT』、その絶望と希望
梁石日が書いた二つの著作『血と骨』と『男の性解放』の間
福島次郎『三島由紀夫──剣と寒紅』と、権力が表現を抹殺するということ
花村萬月の芥川賞受賞作をめぐって
花村萬月の性描写に清潔感がある理由
桐野夏生『柔らかな頬』のキーワード=漂流の意味
桐野夏生に対する直木賞の選評を読んで
●コラム 鬼六先生と僕
II
風俗の向こう側
僕たちはまだ大人のためのエッチビデオを知らない!
ハメ撮り監督カンパニー松尾の欲情と女の子の生々しさ
佐野真一『ドキュメント「堕落論」』の傲慢
大槻ケンヂ、『ザ・風俗嬢』、インタビューのおもしろさとは?
宮台真司『世紀末の作法』における身体性の欠落
僕が性表現に対する規制があっていいと考えるワケ
結城彩雨の残虐ポルノを読む
わが友、W君がオカマを掘られた話
宮台真司『〈性の自己決定〉原論』は絵に描いた餅だ!
初めてポルノを書いてわかったこと
酒井あゆみ『眠らない女』とフィクションの可能性
高橋源一郎『あ・だ・る・と』が描き出した、アダルトビデオの現在
AVを撮るのも困難な時代に生きて……。
●コラム 代々木忠さんと僕
III
フェミニストへの違和感
時には乱交パーティを!
藤本由香里『私の居場所はどこにあるの?』と、結婚しない女について
林道義『主婦の復権』には一読の価値がある!
速水由紀子指弾する「幻想」にとらわれた男とは?
斉藤美奈子・勇気一つを友にして
小谷野敦のエッセイ『もてない男』の印象
『快楽電流』にみる藤本由香里の痛ましさ
林道義『主婦の復権』へのフェミニストの反論を読む
●コラム 書き手を育てるということ
 インタビューの時間
SMを文学する・団鬼六
AV探偵・高橋源一郎
AV界のトップランナー・代々木忠
愛書狂の仏文学者・鹿島茂
あとがき
目次
 村上龍、桐野夏生、花村萬月、団鬼六、代々木忠etc.と著者が繰り広げる熱きバトル

 現代ニッポンのあらゆる矛盾を反映した“性の世界”を見据えて、性表現の最前線を批評するエッセイ集。
 著者による団鬼六・高橋源一郎、代々木忠、鹿島茂氏へのインタビューも収録。

◆◆◆◆◆◆

 セックスレス夫婦、援助交際をする女子高生、アダルト・ビデオに出る人妻たち。そして、困惑し、揺れ動く中年オヤジたち。
 現代ニッポンのあらゆる矛盾を反映した《性の世界》を見据えて、今もっともラディカルな最前線の文学者たちの小説、アダルト・ビデオ、話題の映画、アニメ、ゲーム等にいたるまで遡上にのせ、《エロスの未来》を予見する著者のまなざしは何を見たか?
 20世紀における、すべての価値の崩壊の根底に横たわっているのが、《性の問題》だからこそ、21世紀にはSEXが最大のテーマになると著者は言う。
 仏文学者・鹿島茂氏は言った。『エロスについてずっと考えているからこそ、この世界の歪みが見える。そういうこともきっとある』と。

本書インタビューより

カバーイラストレーション:佐野洋子
カバーデザイン:多田進
発売:1999年12月
ISBN4-89490-561-2
●著者プロフィール
 昭和26年奈良県生まれ。早稲田大学文学部演劇科卒。週刊誌記者・フリーライター・酒造会社勤務等を経て、ふたたびフリーに。高校時代より性心理学者の高橋鐵に傾倒。週刊誌時代には数多くの若い女性に面接し、セックス・リポートを手がけていたこともある。主な著書『愛の学校 代々木忠の世界』(夏目書房刊)