犬になった老人の死
天野哲夫(沼正三) 著
四六判上製 224ページ
定価:1800円+税




亡妻を偲ぶ老人が死に臨んで経験した
エロティックな幻覚の世界




老人は腹這いのまま、自分の体を改めて眺めてみた。

短い栗色の密毛が尾から背中を掩っている。

短めの四肢の内側から腹部を巡り、

咽喉部へかけては白い同じような短毛が、

艶やかな毛並みを見せていた。

この一匹の雑種の中型犬が自分自身であること……。

深い驚きはなかった。

……本文より
「家畜人ヤプー」の著者の新作小説!

 先立った愛妻と自ら命を断った聡明な少女を追慕する老人は、特異な性的嗜好のゆえに、老いてなお、往年の女優、ジーン・アーサーに似た嫁に犬として扱われたいという妖しい夢にとらわれていた。
 幻の作家の手になる新たなる『瘋癲老人日記』
発売:2001年2月
装幀・装画:毛利一枝
ISBN4-89490-581-7
沼正三名義代表作:
『家畜人ヤプー』、『ある夢想家の手帳から』など

天野哲夫名義代表作:
『人斬り彦斎』、『異嗜食的作家論』、『禁じられた女性崇拝』、『女帝ジャクリーンの降臨』、『女神のストッキング』、『女神の棲む闇』、『禁じられた青春』、『狂気にあらず!?』、『勝手口から覗いた文壇人ほ、『三角関係の罠』、『女主人の鞍』、『わが汚辱の世界』など